Successful Failure -短編集-
そんなことを考えていた俺に急に女性が話しかけてきた。
「ねえ、あれ、どう思う?」
そう言って女性が指差したのは、扉前に立っているサラリーマンと男の若者、おそらく俺と同じくらいの年だ。
二人共、変わった様子はなく、それぞれが新聞と参考書を読んでいる。
「ああいう人が好みなんですか?」
酒が入っているせいか、そんなことを言ってしまった。
しまった!と思ったが、女性は顔色一つ変えず、
「なんか真横から見ると、面白くない?あの二人」
そう言ったのだ。
女性が言うように、体を傾けて、真横から見てみたが、何も面白いことはない。
むしろ、電車でよく見る光景だ。
ただ、女性は、思い出し笑いの如く、急にクスクスと笑いだした。
その女性の仕草に気づいたサラリーマンが俺たちを睨みつけてきた。
気まずい。