Successful Failure -短編集-
そういうわけではない。
とは、この状況で言い切れなかった。
俺は、何かを食べに行く時、毎回決まったものを注文していた。
サイゼリアには、ハンバーグセットの他に、パスタやドリアもある。
ハンバーグが大好きなわけじゃなく、かと言ってパスタやドリアが嫌いなわけでもない。
他も同じだ。
「つまり、君は冒険ができないタイプなんだよ、きっと」
冒険ができない。
うーん。そうなのだろうか。
「けど、高校卒業したと同時に、俺、上京してきたんですよ?」
「じゃあ、なんで上京したの?」
言葉に詰まった。
俺は、なぜ上京してきたんだろうか。
夢もない。
やりたいこともない。
ただ、田舎が嫌だった。
ダサいと思った。
そして、夜行バスに揺られて初めて東京の街を見たあの日。
首都高から見えた高層ビル群。
巨大迷路のような新宿駅・・・
「君さー、多分、東京っていう大都市に飲まれちゃってるんだよ。常に周りに見られているって思ってない?人の目を気にしすぎてるんだよ」
女性の言うことは、本当なのかもしれない。
誰かに見られている。
それを常に意識している。
もし、ちょっとでも違う電車に乗ってしまったら、何かが変わるんじゃないだろうか。
言い表すのは難しいが、そんな感じがする。