うそつき王子の秘密のキス
「フツーはさ。
 洗いっぱなしの時はダサくても、ワックスなんかや整髪料でキメるでしょ?
 でも、ソレやったら、奏太ってば『めんどくせー』とか言ってずっとそのままになっちゃうじゃない?
 そんなことやってると、イイこと無いよ?
 彼女も出来ないし。
 本当に、地味男君になったら、もったいなさすぎ!
 でも、これなら、努力しないと地味にならないから、ねぇ。
 今は、ちょっと大人しくしてたいと思っても、気分が変われば、またすぐ戻って来れる」


 女ってさ。


 ヒトの顔見るとキャーキャー騒ぐだけの煩(うるさ)い生き物だ。


 話をしても、そこらへんに転がってる安っい服と甘いモノと男の話ししかしなくてつまんねえから、オレは別に彼女なんて、要らない。


 モデルも悪く無かったけど、歌えねぇんじゃなぁ。派手なステージを歩いても、何やら寂しいから下手に戻ってくる気もねぇし。


 ……と思ったんだけど、なぁ。


 岸さんが、満足そうにうんうんと頷いているから、下手に突っ込まねぇコトにしたんだ。


 ま、オレの希望は通ったから、後は些細なことだ。


 鏡に映った新しい自分に、うん、とうなづいて、岸さんにお礼代わりに握手をすれば、岸さんは、オレの右手を両手で握って言った。
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