うそつき王子の秘密のキス
 積極的にいじめられてはいないけど。


 なんとなく一人が好きで、特に、仲が良いオトモダチもいないし。


 明らかに浮いている井上君をからかう相手役としてぴったり、だったのかもしれない。


 ま……まぁ。


 わたしの方は別に、ね。


 本当の彼氏がいるわけじゃないし。


 たまに見せてくれる笑顔がなんだかステキだから、わたしは井上君との相合傘、そんなに嫌いじゃなかったけれども。


 井上君の方は、どうだったんだろう?


 書かれた相合い傘を一瞬、穴があくかと思うぐらい、ぎゅっとにらんだかと思うと、何だか怒ったような顔で、さっさと消してた。


 普段から、極力誰とも関わらないことにしているらしい、井上君のその反応が面白かったのか、どうか。


 今日は、休み時間ごとに黒板には相合傘が書かれることになった。


 もちろん、わたしだって、見るたびに消して行ったけど、追いつかず。


 わたしが消しそびれたのを、井上君が消すたびに、彼がどんどん不機嫌になっていくのが判る。


 そうだよね。


 美人で可愛い女の子との相合傘ならともかく。


 わたし、全くキレイじゃないし、ね?
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