うそつき王子の秘密のキス
「今年の合唱祭のアンケート、だよ。
 夏休み前に、ウチのガッコでは受験前の三年生との最後の思い出づくり~~とか言って全校で合唱祭するじゃん。
 ウチらのクラスでは、ナニ歌うか決めろって担任に言われてたでしょうが。
 こーいうモノは、いきなり言われても、その場ですぐ出ないから、最初に考えておいたほうが、いいの!」


「……はぁ」


「で。アンタ以外の皆に、聞きまくってクラス全員の希望書いといたから!
 あとは、アンタが、一番最後に合唱祭で歌いたい希望の曲を書いて、担任に提出しといて! 判った!?」


 う……うん。


 なんだか、迫力ある佐野さんの言葉に、なんとか、うんうんってうなづくと、彼女はふん、と鼻を鳴らした。


「まったくもう! 泉川さん、クラス委員なんだからしっかりしてよねっ!」


 そんなこと言ったって!


 わたしだって、好きでクラス委員になったわけじゃないよ?


 ココに居る女子のグループと佐野さんに押し付けられる形でクラス委員にさせられちゃったんじゃないの!


 ……とは、言えずに。


 泣きそうに曇る視界の中、佐野さんを見つめていたら。


 彼女は、もう一度ふんっと鼻を鳴らし、取り巻きの女子を連れて教室を出て行った。
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