うそつき王子の秘密のキス
 急に静かになった教室で、放りだされたアンケートを片付けながらざっと見た限りでは、わたしの知らない曲ばっかりだし。


 きっと、この中から、多数決で流行りの曲になるんだろうなぁ、と思った。


 あ~~あ。


 本当に、何もかも上手く行かないし、嫌なことばかりある。


 でも、こんな時こそ元気の出る曲だよね。


 どうせ、皆が知らない曲だし、選ばれるワケ無いけど紹介ぐらいはしてもいいかな?


 ……って、佐野さんに言われた通り。


 わたし、アンケートの一番最後に今まで鼻歌で歌ってた曲の名前を書いて、アンケートの束を、職員室の担任まで出しに行ったんだ。


 そして、そのまま。


 家に帰ろうと、昇降口に向かったその時だった。


 わたし、見ちゃった。


 井上君が、体育倉庫の裏に入っていく姿を。


 一人じゃない。


 クラスのでも不良っぽい、ガラの悪い男子、何人か……と。


 それが、穏やかな話し合いじゃなさそうだ、ってことは一目瞭然だった。
< 24 / 47 >

この作品をシェア

pagetop