うそつき王子の秘密のキス
 その上、オレ。


 背はそこそこあっても、あんまし体格良くねぇからなぁ。


 オレのコトが気にくわねぇヤツらは、ちょっと脅せばすぐにゴメンナサイするかと思ったらしい。


 でも、そんなモノ。


 つきあう義理なんざ、ちっっともなかったから。


 色々とちょっかいを出しやがるコト、全~~部、無視してやったら相当腹を立てたみたいだ。


 今日は、オレとは全く関係ねぇクラスメートの女子を巻き込んで、散々からかった挙句。


 呼び出し、と称してとうとう本格的に絡んで来やがった。


 別に、縦横オレより一回りも、二回りもデッカイ野郎に取り囲まれてたって、別に怖くねぇ。


 ただ、リーダー格のヤツがちらつかせているハサミがイヤだったんだ。


 こっちが、ちょっと怯んだスキに、刃物が苦手だと踏んだらしい。


 ヤツらは、ハサミを振りかざして、体育倉庫の裏まで、オレを追い詰める。


 くっそ~~


 ヒトを脅すつもりなら!


 中途半端なハサミ、なんてシロモンじゃなく、ナイフ使えよ、ナイフ!


 それだったら、受け流すんでも、蹴り飛ばすんでも自由自在だし!


 とっさに刃の方握って、血をだくだく流しながら、相手からナイフを取り上げたこともある。


 ナイフならぜんぜん全くへっちゃらなのに!


 ハサミだけは、どうもイケナイ。


 ずーっと前。


 オレの本当の母親が死んだあと、ウチのクソ親父が、次の女を連れて来た頃からだ。
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