うそつき王子の秘密のキス
 女の娘になるらしい。


 一緒にくっついて来た『義理の妹』に当たる女のコは、すっげ、明るく、元気なヤツだった。


 ちょっとうるせぇのと、世話好き過ぎんのに目をつぶれば、悪く無かった。


 すぐに『お兄ちゃん』とかって言ってオレになついて、子どもの頃はほとんど一緒に居たし。


 デカくなって家を出てからも、買い物につきあったり、オレのコンサートに招待すればついてきたりで、仲は良かったんだが。


 クソ親父の二番目の妻ってヤツがクソビッチだったんだ。


 男なんて、親父一人で満足すればいいモノを、オレの方まで気に入ったらしい。


 服に隠れた部分を殴る蹴るは、当たり前。


 とうとう、手近にあったハサミを持ちだして、まだ、ちいさなガキだったオレを脅した。


 そして、普通の親子じゃ、絶対あり得ないことを、簡単に要求して来やがったんだ。


 以来、ハサミはトラウマだったし。


 中学の時は、ほとんど家出状態。


 高校に入って、クソ親父と女を殴って適当に金をふんだくり。


 正式に一人暮らしを始めてから、一度も実家に帰ってねぇし、親から資金援助も受けてねぇ。


 オレが生きているのか、心配してるのは、仲の良かった義理の妹と『Z』の岸さんぐらいだ。
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