うそつき王子の秘密のキス
 その、岸さんから『ケンカはするな』って止められてたけど。


 この莫迦なクラスメートに囲まれた状況!


 オレが悪いワケじゃねぇもんな。


 文句言われついでに、要求して来やがった金だって、支払う義理はねぇ。


 なんせ、手前ぇらは、遊ぶ金が欲しいんだろうが、こっちは生活がかかってるんだ。


 ココで負けたら、これから先。要求額も増えてくるのも、目に見えて判ってる。


 早急に手を討った方がイイ……それも判ってる。


 ……でも、ハサミが。


 ハサミが、オレを脅すんだ。


 シャクッと刃を開いた、ハサミが笑う。


『ねぇ、奏太。
 みんなに内緒で、遊びましょう?
 もちろん、お父さんにも、妹になったあの子にも絶対秘密で。
 二人っきりで、イイコトしましょう?』


 くそ。


 こんな近くで、ハサミを見ていると、女の声と臭いまで、思いだしてくるじやねえか!


 濃い香水と、化粧と、メスのケダモノの……



 ……気持ち悪りぃ……



 ハサミを見ているうちに、マジ、吐きそう。


 とうとう、耐えきれなくて、地面に膝をついたオレに、クラスメートが笑って更にハサミをつきつけた時だった。


 助けが、来た。
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