うそつき王子の秘密のキス
「ねぇ、井上君を放してあげて!」


「井上君を放してあげて~~」


 オレを取り囲んだヤツらは、最初からクラスメートの話を聞く気はなさそうだった。


 泉川さんの口真似をしてからかうと言った。


「委員長さん~~ コイツの面倒~~
 俺達で見るからこれから帰って良いですよ~~」


「そうだよ~~ あんまり構うと、委員長さん、コイツの彼女だって思われちゃうよ~~」


 ぎゃっはっはっは~~


 ガラの悪りぃ、クラスメイト達は、そう下品に笑いやがったけれど。


 一方の彼女は震える手を握り締め、顔を真っ青にしている。


 どう見ても、荒事には向いてねぇのは丸見えだったし、もしかしたら、こんな場面に出くわしたのも、初めてだったかもしれねぇ。


 けれども彼女は、引く気は無いようだった。


 勇気を出して、もう一歩前にずぃ、と進むと、もう一度、今度は叫んだ。


「でも、井上君嫌がってるし、すごく気分悪そうじゃないの!
 今すぐ、保健室に連れて行くか、家に帰らせてあげないと~~」


「うるせえ、ブス!」


 なんだと! くそ!


 すごく怖いだろうに、それでもオレを助けてくれようと頑張る、泉川さんが莫迦にされて、カッと頭に血が上った。
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