うそつき王子の秘密のキス
 泉川さんはブスなんかじゃねぇ!


 そりゃあ、絶世の美人かって言うと謎かもしれねぇが、丸い大きな目は可愛いぞ!


 オレのココロの叫びって言うヤツを聞けるヤツがいたら、今怒る所はソコ? って首を傾げるかも知らねぇが、そんなモノ知らんっ!!


 ただ、オレとの名前の入った相合傘の落書きを、悲しげに見つめてる横顔が、落ち着かなかった。


 別にオレが落書きしたわけじゃ無いとは言え。


 今日は、これ以上コイツに迷惑をかけるわけには、行かなかったんだ。


 泉川さんが、このクソ野郎どもに、色々話しかけてくれたおかげで、ハサミの位置もなんとかずれている。


 オレは、ハサミを振りまわしてたリーダをえーーい、と両手で思い切り良く突き飛ばしてた。


「いっ……井上君!?」


 どうやら、オレが絶対反撃出来ないと思っていたらしい。


 いきなりオレに押されて、ハサミを持っていたリーダーは、大きくバランスを崩して転びそうになった。


 その様子に、泉川さんが驚いた声を上げ、クラスメートの野郎どもも、一瞬呆然としてた。

 ふん!


 本当だったら、こんな、喧嘩慣れてません、みたいな反撃じゃなく。


 もっと颯爽(さっそう)と、全員まとめてぶっ飛ばしてたんだぞ!

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