うそつき王子の秘密のキス
 でも、ハサミが視界をちらちらしている以上、コレ以上、なんかやるのは無理で。オレは、さっさと泉川さんの手を取って走りだす。


 別にリーダーを、動けなくなるほど殴ったワケじゃない。


 ただ、突然突き飛ばしただけだから、ヤツはすぐに体勢を整えると、ハサミを振りかざし、子分を引き連れ、追っかけてくるからだ。


 お~~ 怖ぇ~~


 なんか、怒ってるよなぁ。


 ま、でもオレだって普段、弱っちぃと思ってるヤツが中途半端に反撃したら、腹立つし。


 判るぜ、そのキモチ!


 なんて、おっととと。テキに共感くれて、どーするんだって!


 でも、いつもなら追いかける方なんだ。逃げる方なんて慣れて無いんだから仕方がねぇ。


 息を吐いた所で、声がする。


「井……上君っ! どこ行くの……っ!」


 オレに手を引っ張られ、走る泉川さんだ。


 どうやら、あまり走ることが得意じゃない上、こんな風な追いかけっこに慣れて無いみたいだ。


 タダ普通にガッコの中や周りを走り回ったって、二人で走ればすぐに追いつかれてしまうのは、誰にだって判る。


 これからどうするつもりなのか、不安そうな泉川さんに説明が出来れば良かったんだが、あいにく全部の説明をするほど声が出ねぇし。


 立ち止まって、何か書いてる場合でもねぇ!


 悪いなぁ、とは思ったんだが、今は無視!
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