うそつき王子の秘密のキス
『それは良かった。一緒に帰れる』


 ……って! 井上君、わたしの話聞いてたかな?


「だから、わたし、バイクだって!
 でも、原付だから、井上君と二人乗りは出来ないよ?」


 だから、無理。


 そう続くはずだった言葉は、結局言葉になんなかった。


 だって、井上君が。


『泉川さんは、バイクのヘルメットだけ持って来て。
 明日の朝も迎えに行くから、今日はオレの後ろに乗って』


 なんて書くんだもん!


 うそ!


 これって井上君が、バイク通学してるってこと!?


 しかも、二人乗り出来るって言うことは。


 学校で許可、推奨されてる原付バイク……では……ない。


 小型バイク以上……っていうことでしょう?


 男子の大半が破っているとはいえ、原付以外、小型バイクでの登校は一応、校則で禁止されてるって言うのに。


 勉強が大好きで真面目な井上君が、校則違反、するの?


 それこそ、信じられない……よね。


 ………………と思ったのに!


 学校の裏手にある、バイク専用の駐輪場に置いてあったのは、小型バイク、なんて可愛いもんじゃなかった。
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