うそつき王子の秘密のキス
 井上君が自転車にでも乗るように、慣れた様子でエンジンをふかせば、ばぉん、と迫力ある音が響く。


 これ、400㏄は確実にある!


 16才で運転出来る一番大きなヤツだ!


 驚いて、声も出ないわたしに、眼鏡を取り、バイク用のヘルメットを小脇に抱えた見知らぬヒトが笑う。


 散々走って乱れた髪を掻き上げ、バイクにまたがった井上君。


 何だか、急に……カッコイイ……ん、です……が。


 井上君、こんなに足、長かったっけ!?


 背、高かったっけ!?


 そして、何より。


 バイク乗るんでとったらしい、眼鏡無いと……こんなにカッコイイ……ううん。


 男子なのに、なにやら『キレイ』が似合う迫力美人……さん……に見えるんですが。


「君……いっ……井上……君……だよね?」


 驚いて、思わず口走ったわたしの質問に、井上君は呆れたように肩をすくめると『来いよ』って手を振った。


 いっ……良いのかな? わたしなんかが後ろに乗っちゃって。


 気軽にほい、なんて乗れるわけも無く。


 井上君とバイクに、ただ触るのだけだってドキドキで、ためらっていたら、井上君が、突然ぐぃ、と手を引いた。


 と。


 うわ、きゃ~~
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