うそつき王子の秘密のキス
 う~~ん、オレと岸さんの出会い方って最悪の極致だったんだけどな~~


 オレの記憶が正しければ、どっかの汚い路地裏で、岸さんを殴り飛ばした覚えがある。


 ひぇ~~


 今考えると、すげーおっかねぇ~~


 もう、二度と喧嘩を売るつもりはねぇけど!


 第一印象の岸さん。


 今と変わらず、ひよろ~~っとしてる体型の上に、少しお姉ぇ言葉がかった話し方だったから『絶対ぇ弱い』とナメてかかったのがマズかった。


 実際、一発目の拳は簡単に入ったし。


 楽勝楽勝じゃあ、続き、と調子に乗った所であっさり返り打ちに会い。


 なんだか、どたばたやってるうちに、気がつくと、オレの方がフルボッコ。


 そしてそのまま、動けなくなった所で、岸さんに首根っこをひっつかまれて、ぽーーいと警察に……ではなく。


 『AN^NA』の編集部に放り込まれたような……気がする。


 そんな岸さんが妙に強い理由は、実家にあった。


 結構昔から続いてる旧家、武術の師範の家系で、昔から荒事は得意らしい。


 しかも年の近い叔父さんが、地回りを取り仕切るかなり大きな家……要は、ヤクザとか言われる所を、引き継いだんだと。


 本人は気楽に美容師なんてちゃらい仕事についてるけれど。


 叔父さんとは仲良く。


 面倒事が起こると、怖い兄ーさん達が、結構簡単にやってくるそうな。いろんな意味でオソロシイヒトである。


 それが、どーしてオレとこんな付き合いになったんだろう?


 未だにもって、謎の部分だ。

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