Fun days
金髪
ドアに背を向けて、美桜が写真を撮っていると
誰かが入ってきた。
「あ・・・すみません」
美桜が振り向いて言う。
その人は、いいよ、と言うように微笑んで
部室に置いてあった楽器を取って出ていく。
鈴ちゃんと中沢さんは、気にせず演奏しているけど、
そろそろ練習の時間なのかもしれない。
美桜は時計を見て
「鈴ちゃん、帰るね。ありがとう」
小声で言いながら、鞄にカメラをしまった。
鈴ちゃんはギターを弾きながら
「写真出来たら見せてね」
と言った。
美桜は笑って頷いて、部室を出る。
村田もお辞儀をして、ついていく。
「村田、今日はありがとう。
鈴ちゃんのところに行ってよかった」
「たくさん撮れたみたいでよかったね」
美桜はその言葉に頷く。
そして、『もっと村田を撮りたい』って
言いたいのだが、言えない。
食堂でみんなと一緒に撮ったとき
村田は全然いいよ、何枚でも、って
言ってくれたから、今も断らないと思う。
なのに、言おう、と思って村田を見ると、なんか言えない。
さっきジャズ研の部室で撮った村田を、もっと撮りたいのに。
…なんだかドキドキしてしまう。
美桜は、ふう、と息をついて、ふと思ったことを聞いた。
「村田はなんで金髪なの?」
そういえば今まで聞いたことがなかった。
村田の金髪はモノクロで現像すると
きっと白くなって綺麗なんだろうな。
実物は似合わないんだけど。
「言ったことなかったっけ?
高校の時、似合うって言われて
それからずっと金髪なんだ」
ちょっと笑って言う村田。
「へえ、そうなんだ」
あまり似合ってないと思うけど…
どこらへんが似合ってるんだろう。
村田の顔をまじまじと見る美桜。
見られている村田が照れている。
「金髪で学校に行って、
先生に怒られなかったの?」
「うん。頭悪い学校だったから」
そっか、だからヤンキーっぽい金髪なんだ。
「村田はヤンキーだったの?」
美桜の率直な質問に、苦笑いしながら答える村田。
「いや、俺はいじられ役で…遊ばれてたっていうか。
金髪も無理やりやらされてさあ。
でも、好きな人が気に入って…」
はっとした顔で話を止める村田。
恐る恐る美桜を見る。
ちょっと目が冷たい。
「好きな人が気に入ってくれたの?金髪を?」
「…ああ、うん、そう…」
美桜から目をそらして答える村田。
「それで、いまだに金髪にしてるの?」
「そ、そんなことないよ…今は自分で
気に入ってるから、金髪なんだ…」
見ると、しらっとした顔の美桜。
な、何か言わないと…
「…美桜が金髪嫌なら
黒にしようかなあ…どう思う?」
完全に呆れた美桜。
なにそれ。
節操がなくて腹が立つ。
何故こんなにむかつくのか
自分でもわからないことにも腹が立つ。
「金髪でいいんじゃない?」
キレ気味に答えてしまう美桜。
怯える村田。
「そ、そうかな…
美桜、本当にそう思ってる?」
見ると村田はちょっと涙目。
じゃあ最初から言うなよ、もう。
「絶対金髪のままでいて。
黒にしたら絶交するから」
村田を睨んでバッサリと言う。
部室での村田は、かっこいい気がしたんだけど
気のせいだったんだな。
うん、きっとジャズのせいだ。
鈴ちゃんに、今度曲名を教えてもらおう。
この世の終わりのような顔をした
村田を振り切るように
他の事を考える美桜だった。
誰かが入ってきた。
「あ・・・すみません」
美桜が振り向いて言う。
その人は、いいよ、と言うように微笑んで
部室に置いてあった楽器を取って出ていく。
鈴ちゃんと中沢さんは、気にせず演奏しているけど、
そろそろ練習の時間なのかもしれない。
美桜は時計を見て
「鈴ちゃん、帰るね。ありがとう」
小声で言いながら、鞄にカメラをしまった。
鈴ちゃんはギターを弾きながら
「写真出来たら見せてね」
と言った。
美桜は笑って頷いて、部室を出る。
村田もお辞儀をして、ついていく。
「村田、今日はありがとう。
鈴ちゃんのところに行ってよかった」
「たくさん撮れたみたいでよかったね」
美桜はその言葉に頷く。
そして、『もっと村田を撮りたい』って
言いたいのだが、言えない。
食堂でみんなと一緒に撮ったとき
村田は全然いいよ、何枚でも、って
言ってくれたから、今も断らないと思う。
なのに、言おう、と思って村田を見ると、なんか言えない。
さっきジャズ研の部室で撮った村田を、もっと撮りたいのに。
…なんだかドキドキしてしまう。
美桜は、ふう、と息をついて、ふと思ったことを聞いた。
「村田はなんで金髪なの?」
そういえば今まで聞いたことがなかった。
村田の金髪はモノクロで現像すると
きっと白くなって綺麗なんだろうな。
実物は似合わないんだけど。
「言ったことなかったっけ?
高校の時、似合うって言われて
それからずっと金髪なんだ」
ちょっと笑って言う村田。
「へえ、そうなんだ」
あまり似合ってないと思うけど…
どこらへんが似合ってるんだろう。
村田の顔をまじまじと見る美桜。
見られている村田が照れている。
「金髪で学校に行って、
先生に怒られなかったの?」
「うん。頭悪い学校だったから」
そっか、だからヤンキーっぽい金髪なんだ。
「村田はヤンキーだったの?」
美桜の率直な質問に、苦笑いしながら答える村田。
「いや、俺はいじられ役で…遊ばれてたっていうか。
金髪も無理やりやらされてさあ。
でも、好きな人が気に入って…」
はっとした顔で話を止める村田。
恐る恐る美桜を見る。
ちょっと目が冷たい。
「好きな人が気に入ってくれたの?金髪を?」
「…ああ、うん、そう…」
美桜から目をそらして答える村田。
「それで、いまだに金髪にしてるの?」
「そ、そんなことないよ…今は自分で
気に入ってるから、金髪なんだ…」
見ると、しらっとした顔の美桜。
な、何か言わないと…
「…美桜が金髪嫌なら
黒にしようかなあ…どう思う?」
完全に呆れた美桜。
なにそれ。
節操がなくて腹が立つ。
何故こんなにむかつくのか
自分でもわからないことにも腹が立つ。
「金髪でいいんじゃない?」
キレ気味に答えてしまう美桜。
怯える村田。
「そ、そうかな…
美桜、本当にそう思ってる?」
見ると村田はちょっと涙目。
じゃあ最初から言うなよ、もう。
「絶対金髪のままでいて。
黒にしたら絶交するから」
村田を睨んでバッサリと言う。
部室での村田は、かっこいい気がしたんだけど
気のせいだったんだな。
うん、きっとジャズのせいだ。
鈴ちゃんに、今度曲名を教えてもらおう。
この世の終わりのような顔をした
村田を振り切るように
他の事を考える美桜だった。