Fun days
つもり
美桜が写真研究会の部室から出ると、
ちょうど村田も電話を終えて
携帯電話をしまっていたところだった。
「電話、終わった?」
「うん。今日バイト休みになった」
「そうなんだ。…ねえ、
村田の写真、撮ってもいい?」
「う、うん。いいよ…」
午後の講義の時間なので、
どこも人がいなくて、がらんとしている。
でもやっぱりあそこがいいな、と美桜は思って
「部室棟前の広場に行こう」
と村田に言った。
「じゃ、ここに座って」
村田が猫に擦り寄られたベンチを
美桜は指差す。
さて撮ろう、と思い、カメラを取り出すが
すでに村田の顔がこわばっている。
「村田、何か飲む?」
「あ、俺、水持ってるから大丈夫」
「そっか。」
そう言って、美桜も村田の隣のベンチに座る。
このままじゃ、緊張でガチガチの村田しか撮れないから
何とかリラックスしてもらわないとなあ…
「あ、夏休みの花火、楽しみだね」
「…うん。」
ペットボトルの口を閉めながら
村田が笑って頷く。
「浴衣、着ようかな」
「うん」
返事をする村田を見ると、優しく微笑んでいる。
美桜は少し離れて、カメラを構える。
”カシャ”
びっくりして村田が美桜を見る。
「ごめん。突然撮って。驚いたよね」
「ううん。大丈夫」
照れたように笑う村田。
美桜は立ち上がって、また村田を撮る。
「ねえ、村田の好きなものって何?」
カメラから顔を出して、美桜が聞く。
えー…。
…美桜。
って言えるわけないか…
うつむく村田。
「うーん…布団、とか?」
ふふっと美桜は笑う。
朝、起きないもんね。
「…あとは?」
「え、えーと…あ、マンガ」
…うーん。
村田の自然ないい表情が撮りたいんだけど、
布団やマンガを思い出してもらっても、
なんか違うよなあ…
「あ、実はスポーツ好きなんだよね。
バスケ小さいころやってて」
「へえ~そうなんだ~。
じゃ、やってみて。エアバスケ」
「え、ここで?」
美桜の無茶振りに笑ってしまう村田。
「はい、パス」
エアパスを村田に送る美桜。
受け取ってしまった村田は
笑いながらエアドリブルをして、エアゴールを決める。
思った以上に恥ずかしくて、笑う。
「かっこいい!」
「うそだ~。美桜、笑ってるじゃん」
カメラが構えられないくらい、美桜はうけている。
「ごめんごめん。
ほんと、村田って素直でいいよね」
うん。村田のそういうところ、本当にいい。
カメラを構えて、笑顔の村田を撮る。
「あ、エアバスケ撮ってないから、もう一回やって」
「まじでー?」
言いながら、もう一度エアドリブル、
そしてエアゴールを決める村田。
「撮れたー?」
笑いながら美桜に聞く。
頷いて、また笑い始める美桜。
「もう、美桜、うけすぎー」
村田も笑う。
その笑顔を少し近づいて、撮ろうとする美桜。
あ、村田に恋してるつもりで撮るんだった。
好き、って思いながらシャッターを押してみよう…
”カシャ”
更に近づいて撮る。
好き、って思いながら。
”カシャ”
恥ずかしがっている村田の横顔も、撮ってみる。
好き。
”カシャ”
…何だか苦しくなってきた。
カメラをおろす美桜。
村田に思ったより近づいていて、どきっとする。
笑っていない美桜に村田が気づく。
「もういいの?」
優しい顔の村田。
つもり、なのに、
好き、がまだ心に残っていて苦しい。
「…うん。もういいや。ありがとう」
美桜は村田を見れずに
そう言って、鞄にカメラをしまった。
ちょうど村田も電話を終えて
携帯電話をしまっていたところだった。
「電話、終わった?」
「うん。今日バイト休みになった」
「そうなんだ。…ねえ、
村田の写真、撮ってもいい?」
「う、うん。いいよ…」
午後の講義の時間なので、
どこも人がいなくて、がらんとしている。
でもやっぱりあそこがいいな、と美桜は思って
「部室棟前の広場に行こう」
と村田に言った。
「じゃ、ここに座って」
村田が猫に擦り寄られたベンチを
美桜は指差す。
さて撮ろう、と思い、カメラを取り出すが
すでに村田の顔がこわばっている。
「村田、何か飲む?」
「あ、俺、水持ってるから大丈夫」
「そっか。」
そう言って、美桜も村田の隣のベンチに座る。
このままじゃ、緊張でガチガチの村田しか撮れないから
何とかリラックスしてもらわないとなあ…
「あ、夏休みの花火、楽しみだね」
「…うん。」
ペットボトルの口を閉めながら
村田が笑って頷く。
「浴衣、着ようかな」
「うん」
返事をする村田を見ると、優しく微笑んでいる。
美桜は少し離れて、カメラを構える。
”カシャ”
びっくりして村田が美桜を見る。
「ごめん。突然撮って。驚いたよね」
「ううん。大丈夫」
照れたように笑う村田。
美桜は立ち上がって、また村田を撮る。
「ねえ、村田の好きなものって何?」
カメラから顔を出して、美桜が聞く。
えー…。
…美桜。
って言えるわけないか…
うつむく村田。
「うーん…布団、とか?」
ふふっと美桜は笑う。
朝、起きないもんね。
「…あとは?」
「え、えーと…あ、マンガ」
…うーん。
村田の自然ないい表情が撮りたいんだけど、
布団やマンガを思い出してもらっても、
なんか違うよなあ…
「あ、実はスポーツ好きなんだよね。
バスケ小さいころやってて」
「へえ~そうなんだ~。
じゃ、やってみて。エアバスケ」
「え、ここで?」
美桜の無茶振りに笑ってしまう村田。
「はい、パス」
エアパスを村田に送る美桜。
受け取ってしまった村田は
笑いながらエアドリブルをして、エアゴールを決める。
思った以上に恥ずかしくて、笑う。
「かっこいい!」
「うそだ~。美桜、笑ってるじゃん」
カメラが構えられないくらい、美桜はうけている。
「ごめんごめん。
ほんと、村田って素直でいいよね」
うん。村田のそういうところ、本当にいい。
カメラを構えて、笑顔の村田を撮る。
「あ、エアバスケ撮ってないから、もう一回やって」
「まじでー?」
言いながら、もう一度エアドリブル、
そしてエアゴールを決める村田。
「撮れたー?」
笑いながら美桜に聞く。
頷いて、また笑い始める美桜。
「もう、美桜、うけすぎー」
村田も笑う。
その笑顔を少し近づいて、撮ろうとする美桜。
あ、村田に恋してるつもりで撮るんだった。
好き、って思いながらシャッターを押してみよう…
”カシャ”
更に近づいて撮る。
好き、って思いながら。
”カシャ”
恥ずかしがっている村田の横顔も、撮ってみる。
好き。
”カシャ”
…何だか苦しくなってきた。
カメラをおろす美桜。
村田に思ったより近づいていて、どきっとする。
笑っていない美桜に村田が気づく。
「もういいの?」
優しい顔の村田。
つもり、なのに、
好き、がまだ心に残っていて苦しい。
「…うん。もういいや。ありがとう」
美桜は村田を見れずに
そう言って、鞄にカメラをしまった。