Fun days

現像

美桜は写真研究会で
村田の写真を現像していた。

「…いいじゃん。どの村田君もいいよ」

ネガを見ながら吉岡が言う。

「はい…でもあの技ダメです。苦しくて」

「あの技って、好きになったつもりで
 撮るってやつ?」

「はい」

思い出して、また少し苦しくなる美桜。

それって、本当に好きなんじゃないのかな、
と吉岡は思うが、言うのはやめておく。
せっかく部員が増えたのに、
ご機嫌を損ねて、辞められたら困る。

「いやあ、いいねえ。若いって…
 あ、村田君て、結構イケメンなんじゃない?」

かわりに褒めておくことにする。

「そうですか?」

現像した村田の写真を眺める美桜。
ああ、そういえばそうかな。
金髪のイメージに隠されてるけど
よく見ると、整ってる顔かも。

「村田に伝えておきます。あ、そうそう
 今度ジャズ研の演奏撮らせてもらうんです。
 楽しみ~」

村田の写真をしまって、笑顔で言う美桜。

「ああ、ジャズ研とか吹奏楽はいいね。
 動かないから撮りやすい」

「ですよね。村田のエアバスケの写真、
 ブレブレでショックでした…」

「動きのある写真を撮るときは
 シャッタースピードをはやくするといいよ。
 …美桜ちゃんのカメラ貸して」

吉岡は美桜のカメラの
シャッタースピードダイヤルを指差す。

「ここを変えるんだよ」

「へー、知らなかった~…」

村田にまたエアバスケ、やってもらおうかな。

…いや、でも、村田を撮るのは当分いいや。
苦しくなるから…

ジャズ研の演奏、楽しみだな。
そう思って、苦しさをごまかす美桜だった。
< 31 / 70 >

この作品をシェア

pagetop