Fun days

これから

試合が終わり、休憩時間になったようで、
ベンチの近くにみんな集まってきた。

近くで見るとすごい汗。
これ、撮ってもいいのかな。
躊躇する美桜。
さっきまでの顔と違うから、撮りたいけど、
自分だったら、嫌だもんなあ…

「美桜ちゃん、写真撮って~」

健吾に声をかけられる。
うん、と頷いて、立ち上がってカメラを構える美桜。
健吾くんって、やっぱりいい奴なのかな?

「退屈じゃなかった?」

村田が美桜に言う。

「全然。楽しかった!」

「そっか。よかった。
 まだ一時間やるけど、見てく?」

「うん。もっと撮りたい」

笑顔で答える美桜を見て、安心する村田。

話し相手もいないし、知らないやつばかりだから
つまらないかと思っていたけど、誘ってよかった。
俺も美桜がいてくれると嬉しいし。
本当によかった。

その後も、短い休憩を交えながら試合は続いた。
美桜は夢中で写真を撮った。
みんなの顔を撮るのが楽しくて
体育館の中の風景を撮ることなんて
忘れてしまっていた。

一時間経ったようで、
みんながボールを片付けはじめる。
時計を見ると、もうすぐ5時。
あっという間だったなあと思っていると
村田が来て、美桜に言った。

「みんなでメシ行くけど、美桜はどうする?」

「美桜ちゃんも行こうよ。
 男ばっかでつまんないんだよ」

ついてきた健吾が言う。

そういえば、お腹が空いたな、と思う美桜。
健吾以外のみんなとも、話してみたい。
でも…

「私は写真研究会に寄って、帰るから…」

「今から、現像するの?」

美桜の言葉を遮る村田。

「この前、現像してて
 終電で帰ったって言ってたよね…」

何気なく言ったこと、ちゃんと覚えてるんだな…
感心してしまう美桜。

「9時には帰るよ。吉岡さんにも言われたし…」

村田は黙ったままだ。
心配させちゃってるなあ…

「大丈夫だよ。吉岡さん、
 そのせいで真ちゃんに怒られて
 絶対9時以降はだめって言ってたから」

その名前が出ると、つらい村田。
真二さんに言われたから大丈夫、か…。
違う意味で不安になる。

村田が胸を痛めていると

「…なんか君たち、つきあってるみたいだね」

健吾が口をはさむ。
意外な言葉に驚き、顔が赤くなる村田。

「ていうか、そこまで心配しなくてもいいんじゃない?
 子供じゃないんだからねえ。美桜ちゃん」

うつむきはじめる村田をよそに、健吾は美桜に話をふる。

「…村田は優しいから。
 終電で帰って、心配かけた私が悪いの。」

健吾に言い返す美桜。

「…へ~」

ニヤニヤしながら村田を見る健吾。
村田はうつむいて、横を向く。

「ちゃんと9時には帰るし、帰ったらメールする」

健吾を気にせず、村田に美桜は言う。

「…うん」

ちょっと顔を上げて、やっと返事をする村田。

「じゃ、行くね。
 明日、写真持ってくるから」

そう言って、美桜は体育館を出て行った。
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