Fun days
雅巳
夏らしい太陽を見て
本当に梅雨は明けたんだなあと思う美桜。
村田の家に続く坂が、美桜を苦しめていた。
夏休みになってもこの坂を上るとは
思ってもみなかった。
いや、そんなことはないか。
何となく、ここにはよく来る気がしていた。
あの家、好きだし。雅巳も好きだ。
まだいちいちドキドキする。
雅巳はもう起きているんだろうか。
慣れた手つきでチャイムを鳴らす。反応がない。
…寝てるんだな。
起きてるって言ったのにー。
仕方なく合鍵を取り出すと、ドタドタと走る音が
家の中から聞こえる。
「美桜、今開けるからっ」
そして焦った雅巳の声。
笑っていると、ドアが開いた。
意図せず、満面の笑みで挨拶をすることになる美桜。
「おはよう…すごい寝癖」
ちょっと可愛いけど。
笑いながら、家に入る。
「ごめん、昨日興奮して眠れなかった」
遠足前の子供みたい。
「いいよ。顔に落書きしたかったけど」
美桜の言葉から、昨日の電話は
夢じゃなかったんだな、と実感する。
落書きは水性でって話、したもんな…
「シャワー浴びてきなよ。写真整理してるから」
「うん。歯も磨いてくる」
「あまり遅いと覗くからねー」
パソコンを立ち上げながら、美桜が言う。
シャワーを浴びながら、にやにやする雅巳。
やっぱり本当だったんだなあ…
何か、美桜、違うもん。愛がある感じがする…
夢の中で何度もした歯磨きを、やっと現実でも叶える。
「雅巳、まだー?」
美桜が洗面所を覗く。
「あ、もう行くよ」
髪、セットしてないけど、いいか。
そして、やっぱり雅巳って呼ぶんだなあ。何だか照れる。
パソコンの写真を見ながら美桜が聞く。
「これは山田くん?」
「うん。背番号が9だから、山田だよ」
「そっか。ありがとう」
雅巳の頭を見て、美桜が言う。
「…雅巳の髪の毛、自然でいい感じ」
「そう?乾かしただけなんだけど」
「うん。可愛い」
そう言って美桜はまた、パソコンの画面を見る。
可愛いかあ…もうずっと、このままの頭でいいか。
「よし。写真の整理終了」
「お疲れ様でした。あ、お茶持ってくるね」
雅巳は台所に向かった。
伸びをして立ち上がり、窓の外を見る美桜。
外は暑いんだろうなあ。
窓から熱気が伝わってくる。
テーブルにお茶を置いて、雅巳も美桜の隣へ行く。
「すっかり夏だね。」
「うん、空が青い」
飛んで行けそう、と思う美桜。
「あ、花火、いつ行こうか」
やっとこの話ができる。
「横浜の花火大会がいいな。意外と穴場が多いんだよ」
「うん。じゃそうしよう」
考えてみれば、焦らなくても
いつでもできる話だったな。今となっては。
「あと、水族館も行きたい」
「うん、行こうね」
「雅巳の行きたいところは?」
「うーん。美桜となら、どこでもいいなあ」
はあ、と息をつきながら、顔を覆う美桜。
「あ、ごめん。ちゃんと考える」
「ううん…嬉しいの」
美桜は笑って答える。
「そうだね。どこでもいいね。二人なら」
「うん。」
安心して雅巳も笑う。
見つめあう二人。
愛しい気持ちがこみ上げる。
雅巳の顔が近づいてきた。美桜が目を閉じる。
唇と唇が触れあう。
唇の柔らかさは、そのまま
美桜すべての柔らかさみたいだ。
雅巳の唇から、たくさんの好きが入ってくる。
身体中の血液が熱を帯びて
やっぱり空が飛べそうだ、と美桜は思った。
本当に梅雨は明けたんだなあと思う美桜。
村田の家に続く坂が、美桜を苦しめていた。
夏休みになってもこの坂を上るとは
思ってもみなかった。
いや、そんなことはないか。
何となく、ここにはよく来る気がしていた。
あの家、好きだし。雅巳も好きだ。
まだいちいちドキドキする。
雅巳はもう起きているんだろうか。
慣れた手つきでチャイムを鳴らす。反応がない。
…寝てるんだな。
起きてるって言ったのにー。
仕方なく合鍵を取り出すと、ドタドタと走る音が
家の中から聞こえる。
「美桜、今開けるからっ」
そして焦った雅巳の声。
笑っていると、ドアが開いた。
意図せず、満面の笑みで挨拶をすることになる美桜。
「おはよう…すごい寝癖」
ちょっと可愛いけど。
笑いながら、家に入る。
「ごめん、昨日興奮して眠れなかった」
遠足前の子供みたい。
「いいよ。顔に落書きしたかったけど」
美桜の言葉から、昨日の電話は
夢じゃなかったんだな、と実感する。
落書きは水性でって話、したもんな…
「シャワー浴びてきなよ。写真整理してるから」
「うん。歯も磨いてくる」
「あまり遅いと覗くからねー」
パソコンを立ち上げながら、美桜が言う。
シャワーを浴びながら、にやにやする雅巳。
やっぱり本当だったんだなあ…
何か、美桜、違うもん。愛がある感じがする…
夢の中で何度もした歯磨きを、やっと現実でも叶える。
「雅巳、まだー?」
美桜が洗面所を覗く。
「あ、もう行くよ」
髪、セットしてないけど、いいか。
そして、やっぱり雅巳って呼ぶんだなあ。何だか照れる。
パソコンの写真を見ながら美桜が聞く。
「これは山田くん?」
「うん。背番号が9だから、山田だよ」
「そっか。ありがとう」
雅巳の頭を見て、美桜が言う。
「…雅巳の髪の毛、自然でいい感じ」
「そう?乾かしただけなんだけど」
「うん。可愛い」
そう言って美桜はまた、パソコンの画面を見る。
可愛いかあ…もうずっと、このままの頭でいいか。
「よし。写真の整理終了」
「お疲れ様でした。あ、お茶持ってくるね」
雅巳は台所に向かった。
伸びをして立ち上がり、窓の外を見る美桜。
外は暑いんだろうなあ。
窓から熱気が伝わってくる。
テーブルにお茶を置いて、雅巳も美桜の隣へ行く。
「すっかり夏だね。」
「うん、空が青い」
飛んで行けそう、と思う美桜。
「あ、花火、いつ行こうか」
やっとこの話ができる。
「横浜の花火大会がいいな。意外と穴場が多いんだよ」
「うん。じゃそうしよう」
考えてみれば、焦らなくても
いつでもできる話だったな。今となっては。
「あと、水族館も行きたい」
「うん、行こうね」
「雅巳の行きたいところは?」
「うーん。美桜となら、どこでもいいなあ」
はあ、と息をつきながら、顔を覆う美桜。
「あ、ごめん。ちゃんと考える」
「ううん…嬉しいの」
美桜は笑って答える。
「そうだね。どこでもいいね。二人なら」
「うん。」
安心して雅巳も笑う。
見つめあう二人。
愛しい気持ちがこみ上げる。
雅巳の顔が近づいてきた。美桜が目を閉じる。
唇と唇が触れあう。
唇の柔らかさは、そのまま
美桜すべての柔らかさみたいだ。
雅巳の唇から、たくさんの好きが入ってくる。
身体中の血液が熱を帯びて
やっぱり空が飛べそうだ、と美桜は思った。