Fun days

甘い

何度も見つめあい、キスをして、抱き合った。
甘い時間ってこういう時間なんだろうな、と
実感した雅巳だった。
そして、甘い時間は過ぎるのがはやい。
そろそろバスケの練習時間だ。
吉岡に写真を見せに行くのは中止したのに
まだまだ時間が足りなかった。

手をつないで学校まで歩く。
アスファルトが熱いのは、
夏の気温のせいだけじゃないのかもしれない。
慣れたこの道を、手をつないで歩くなんて。
気恥ずかしくて、また熱くなる。
でも手は離せない。
手のひらを通して伝わってくる、好き、を逃したくない。

ふと、美桜が聞く。

「…雅巳って呼ばないほうがいいかな」

「うーん。美桜が呼びやすいほうでいいよ」

優しい顔で答える雅巳。
やっぱり好きだなあと思う美桜。
名前も、雅巳も。
そういえば杏子ちゃんが、
みんな、二人は恋人同士みたいなものだと
思ってるって言ってた。
特に違和感ないかもね。無いといいなあ。

体育館が近づくと、どちらからともなく手が離れた。
熱かった手が急に涼しくなって、寂しい。

見ると、体育館の入り口に杏子が立っていた。

「美桜ちゃん!」

美桜の姿を見つけるなり、駆け寄ってくる。

「杏子ちゃん…昨日はごめんね」

笑顔の杏子がうれしくて、また泣きそうになる美桜。

「私こそごめんね。心配かけちゃって…
 今日来てくれて、よかった」

涙目で笑う美桜の頭をなでて、雅巳は体育館に向かった。
雅巳の背中を見送る美桜。

「杏子ちゃん、私、素直になったよ。
 村田のこと、好きだって言ったの」

「そっかあ。良かったね。村田君、喜んだでしょ」

「うん」

雅巳の熱い唇を思い出して、顔が熱くなる。

「美桜ちゃん。私、佐々木と付き合うことにした」

「えっ?ええ?そうなの?」
いけないと思いつつも、ものすごく驚いてしまう美桜。

「昨日、佐々木に告白されて、すごくどきどきして、
 これが恋なんじゃないかなって思ったの。
 健吾への”好き”は違うものだったのかもしれない。」

うつむきながらも、優しく微笑んでいる杏子。

「…そうなんだ…杏子ちゃん、幸せそう。うれしい」

「ありがとう」

二人で笑いあう。

「今日はカメラ持ってこなかったし、
 杏子ちゃんのお手伝いがんばるから
 何でも言って」

「そんなに張り切るほど、やることないけどね」

「じゃ、またおしゃべりしよう」

「うん。練習そっちのけで」

二人は話しながら体育館に入る。
すでに、みんなはウォーミングアップを始めていた。
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