紙飛行機にのせて…
昏睡 Ⅰ
「…花戸。」

琴美が錯乱したのを目の当たりにし、
落ち着いたかと思えば気を失って、一週間たった。

季節は、夏から秋に変わり目を見せていた。


「…花戸。」

慎也は、眠っている琴美を見て、あの写真を見た。



「…琴美〜!」
馬鹿でかい声が琴美の病室に響く。

慎也は写真をさっと、ズボンのポケットに入れた。


入ってきた人物は、慎也には分かった。

「…五十嵐詠一。」

「あ、しーず〜や君!」

(まだ、名前覚えてないんだ。別に良いけど。“赤の他人”だし…)

「院内では静かにしてよ…」
うっとおしく、注意した。

「静也君!それはすまない!でも、静也くんだって、人の事はいえないんじゃなーい?」



(うざい…暑苦しい。それとこいつ…)

詠一は激しい喜怒哀楽に、テンションが高い。


「花戸。お前に話したい事があるってのに…」

ポツリと、詠一に聞こえないように呟いた。



「慎也…おや?詠一君?で、合ってるよね?」


父親が来た。
何度も言うが、慎也が1番会いたくない人物だ。


「琴美ちゃん…まだ目が覚めないんだ。

あ、そうだ!慎也、詠一君?君たちには話しておこうかな…琴美ちゃんの事。」

「は?」

慎也は、片眉根が上がり、顔がひきつった。

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