ドッペル・ゲンガー
 それで起こしてくれなかったのかな。

 電気が止まっているのなら、もしかするとご飯も炊けていないのかも知れない。

 ただ、俺が部屋に上がってからだいぶ時間が経っているので、もしそうなら随分と長い時間停電している事になる。

 少し怪訝に感じながらも俺は注意して階段を降りた。

「おーい、今起きたんだけど……停電?」

 思った通り真っ暗なリビングの奥へと、扉を開けながら声をかける。

 しかし返事はなかった。

「誰もいないのか?」

 少し声のトーンが下がる。

 やはり家族の声は返ってこなかった。

 おかしいな。

 ひとまず携帯へと視線を落とす。

 ロックを外しメッセージアプリのアイコンを確認してみたけど、未読はなし。

 わざわざ起こすとまではいかなくても、出掛けるならメッセージぐらいあっても変じゃない。

 ただ、バイトをしている兄は一旦置いておくにしても、両親がこんな時間に二人揃って出掛けるような用事も思い浮かばなかった。
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