ドッペル・ゲンガー
 考えるだけ無駄だと思ったので、とりあえず俺は母に電話をする事にした。

 ついこないだ部活帰りに電話をしたので、履歴から母の名前を探す。

 あっさりと見つかった母への発信履歴をタップすると、表示はコール中の画面へと切り替わった。

 何度目かのコールの後、電話が繋がったのか受話口から漏れるコール音が止んだ。

「もしもし? ……っ」

 俺は反射的に携帯を耳元から離した。

 向こうから聞こえてきたのはザザ、という不快な機械音だった。

 何だかよく分からないままディスプレイを眺めていると、通話が切れたのか表示はホームへと戻る。

 一体何なんだよ。

 耳元を触りながらもう一度母にコールをする。

 けれど、結果は同じだった。
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