ドッペル・ゲンガー
「答えは出たか?」

 どうやら俺の言葉を待っていたらしい。

 暗い闇を覗かせる瞳が俺を見つめる。

「答えも何も、俺には関係ない。それよりも、お前が俺をここに連れてきたんなら早く元の場所に帰してくれよ」

 負けじと見つめ返す。

「決断するまでは戻れない。それに、この世界はお前が作り出したものだから」

 何を言ってもラチがあかない。

 このまま平行線の言い合いを続けていたら駄目だ。

 何か、元の世界へ帰る方法は……

 ゴポッ……

 俺が思案していると、何やら気味の悪い音が聞こえた。

 考えながら逸らしていた視線を"俺"へと戻すと、驚いた事にそいつは口から黒い液体を垂らしていた。

「おい……お前……」

 俺が後ずさると、さらに今度は目尻からも同じように黒い液体が頬を伝って気味の悪い筋を作った。

「時間ガない。"俺"はモう限界なんだヨ……」

 ゴポゴポと次から次へと溢れだす黒い液体。

 口と目からだけでなく、今度は鼻から、そして耳から……

 びちゃびちゃ、と地面に叩きつけられる音に俺は恐怖で固まった。
< 114 / 147 >

この作品をシェア

pagetop