ドッペル・ゲンガー
 ……分からない。

 一体どこに逃げればいいのか。

 それに、明らかに体勢が不利な大吾を放って自分だけ逃げていいのか。

「駄目だよ! だって大吾……」

「いいから早く行け! きっと志乃と透も近くにいる! 俺は後で追い付くから、まずは二人と合流しろ!」

 志乃と透が……?

 私は驚きを隠せなかった。

「もたもたすんな! 早く……ッ」

「絶対……絶対だからね!」

 大吾の気迫に押された私は、わけも分からずその場から駆け出した。

 これが正しい選択かどうかは分からなかったけれど、血走った目で大吾に襲いかかる"私"を自分一人の力でどうにかできるとは思わなかった。

 お願い……無事でいて……

 心の中でそう強く願うと、私は背後でもみ合う二人の姿を一瞥して通りの角を全速力で曲がったーー
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