ドッペル・ゲンガー
「そうだったんだ……」

 やっぱり"彼女達"は私達の事を殺そうとしているらしい。

 ただ、今の透の口ぶりから私は少し気になった事があった。

「話している内に、って言ったけど、ちゃんと会話したって事? 一方的に向こうが喋ってたとかじゃなくて?」

 私の場合は、ほとんど向こうが一方的にわけの分からない言葉を投げてきただけだ。

 あれを会話とは言わない。

「話したよ。って言ってもほとんど意味不明だったけどな」

「例えば?」

 私の興味は会話の内容に惹き付けられた。

「確か……"あんまり時間がない"だとか"生かすか殺すか決めるのはお前だ"とか"決断するまで戻れない"とか……ほんと、意味不明だったよ」

 新しい情報だった。

 私の場合は、そんな会話なんてしていない。

 挑発するような言葉を吐かれて、逃げ出して追い付かれたら今度は自己完結な言葉を口にしてすぐに襲われた……

 相手にも私達と同じように個性があるのだろうか。

 自分とそっくりな顔をしたあり得ない存在だったから、彼女の事を確立した一人の存在として認められなかったので、そこまで深く考えていなかった。

 ただ、そっくりなのは容姿だけ。

 並べた言葉や態度を見て、とても私と同一の人物だとは思えなかった。
< 129 / 147 >

この作品をシェア

pagetop