ドッペル・ゲンガー
「そういえばね。私、殺されかけた時に大吾に助けてもらったんだ」

「大吾もいるのか!?」

 透はもう驚きっぱなしだった。

「それだけじゃないよ。志乃だって近くにいるって言ってた」

「志乃まで……」

 透は複雑そうな表情を浮かべる。

「じゃあ大吾はどうしたんだ? 何で美咲と一緒にいない?」

「大吾が私をかばってくれた時、相手ともみ合いになって……その時に、先に行って透と志乃に合流するように言われたんだ。詳しい話は後からするって。放っておけなかったんだけど、大吾の気迫もすごかったし、何より私の力じゃどうしようもなくて……」

 言いながら後悔が胸を締めつけた。

「だから早く志乃を見つけないといけないの。大吾、ひどい怪我してるから……」

「怪我してるのか!?」

 私は悲痛に顔を歪めながらうなずく。

「相手が持ってた包丁が刺さって……」

「マジかよ……」

 重い沈黙が間を作る。
< 130 / 147 >

この作品をシェア

pagetop