ドッペル・ゲンガー
「とにかく、志乃を早く捜そう。大吾がそう言ったんなら信じるしかない」

 ぎりっと透が奥歯を噛み締める。

「ねえ透。大吾、大丈夫だよね……?」

 明確な答えが返ってくるはずがない。

 けれど、私は誰かに縋りたかった。

 気休めだとしても、『大丈夫』の一言が欲しかった。

「大丈夫だよ。あいつはああ見えて根性あるから。普段はだらけて見えるけど、約束を簡単に破るような奴じゃない」

「そうだよね」

 ここで希望的観測を言い合っても仕方がない。

 でも、透のその言葉に勇気をもらった私は、控えめな笑みを返した。

「とにかく歩こう。追い付かれても厄介だし。同じような状況だとしたら志乃が危ない」

 私は力強くうなずくと、歩き始めた透に続いたーー
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