ドッペル・ゲンガー
「どうしたの?」

 立ち止まりながら、小声で透の様子を探る。

「向こうの角の影から何か聞こえる……」

 透の言葉に、私は耳を澄ました。

 確かに、微かではあるけれど、何やら金属を擦るような音が聞こえる。

 あまり重量感がなく、例えるなら細いかもしくは薄めの金属で壁か地面を引っ掻いているような、そんな感じ。

 その音は、向こうの角の奥からゆっくりとこちらの通りが見える位置まで迫ってきているようだった。

「こっちだ」

 耳打ちするように、透が数歩下がったところにある民家の門を指差した。

 そこでやり過ごすつもりだ。

 私は黙ってうなずくと、動き出した透に続いた。

 一般的な門扉は取っ手を下に九十度下ろすと、引っかかる部分が上に持ち上がって薄く隙間を作った。

 音を立てないようにゆっくり手前に引いて自分達が通れるスペースを作ると、物音を立てないようにそっと身を滑りこませた。
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