ドッペル・ゲンガー
「見ィーっけ……」

 突然の声に、私も透もそのままの姿勢で凍りついた。

 私達が隠れていた、胸元ぐらいの高さの塀。

 外側から門扉の数歩隣。

 顎を乗せるようにして顔だけをこちらに覗かせながら、嬉々とした声を上げたのは……

 顔面を陥没させ、不揃いな歯を見せる"私"だった。

「いやっ……」

 絞り出した声は、声というより音に近かった。

「一体いつになったラ出て来ルんダろうと思ってタんだよ? かくれンぼしテル気分ハどうダった?」

 にたにたと笑みを浮かべた"私"と、後ずさった私達との距離は塀を挟んでわずかに一メートルほど。

 至近距離で見た"私"の顔は、少し前、逃げた時にぶれる視界で捉えた時よりもはっきりと映った。

 鼻や口元だけでなく、右目の下あたりも異様に腫れ上がり、片目はもうほとんど視界を失っているんじゃないかと思わせた。

「遊びニ付き合ってあげタんだからもウいいでしョ? ホラ、早くコっちにおいでヨ……」
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