ドッペル・ゲンガー
「お前が、美咲の……」

 透が愕然とした声を上げる。

「ドいてモらってイいかナ? こレは透にハ関係ノない事ダから」

 "私"の口角が歪む。

「お前ら何なのか知らないけど、もういいだろ。早く俺達を元の世界に帰してくれよ」

 透がまた一歩、私を背後に隠すようにして後退した。

「面倒臭いナあ、モう……時間がなイんダよ。このマまだと、二人トもアっちの世界ヘ帰れなクなるヨ?」

「どういう意味だ……?」

「ごちゃゴちゃウるさいヨ、ほンと。アんたはサっさトもう一人ノ自分をドうにかしシテおいでヨ。どウせモウ、会っタんでシょ?」

 溜息に似た音を漏らしながら、"私"はじりじりと後退する私達をよそに、門扉を空いた方の手で開けてこちらへとにじり寄る。

「美咲……俺が飛びかかったら、その隙に逃げろ」

 視線は"私"から逸らさずに、顔を半分だけ私に向けた透が小声でささやく。

「でも……」

「何ヲこそこそ言ってんノ? コんなとこロデ男らしサヲ見せたっテ何ノ意味もナイよ?」

 ピントのずれた声を向けながら、ついに"私"との距離は二メートルを切ろうとしていたーー
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