ドッペル・ゲンガー

決別のナミダ

「やっと見つけた……」

 振り返った時には、"私"の体は不安定に右側へとぐらついていた。

 声の主へと視線を伸ばすと、風を切る音とともに二発目が繰り出されていた。

 短い悲鳴が上がって、"私"の体は地面に打ちつけられる。

「だ、大吾……」

 倒れた"私"を見降ろし、肩で息をする大吾に私は驚きを隠せなかった。

「美咲、大丈夫か?」

「う、うん……」

 大吾が生きていた。

 死の恐怖からほんの少しだけ解放されながら、私はまた大吾と再会できた事に胸が高鳴っていた。

「ダ、大吾……」

 鉄パイプで打ちつけられた右腕を庇うようにして手を添えながら、"私"が大吾を睨みつける。

 上腕は衝撃で折れてしまったのか、肩の少し下辺りから外側に向かって少し曲がっていた。

「しぶとい奴だな。ちょっと寝てろ」

 ゴツ、と三度目の衝撃音。

 今度は頭に強烈な一撃を受けた"私"の目がぐるんと白目を剥いて地面に横たわった。
< 146 / 147 >

この作品をシェア

pagetop