ドッペル・ゲンガー
「……ほら、行くぞ」

「ち、ちょっと待って。透が……ひどい怪我してるの」

 私に手を差し伸べ促す大吾を制して、私は門扉の方へと視線を向けた。

「透が……?」

 眉をひそめて私の視線の先へと向かう大吾の背中を追う。

 門扉の少し奥には、呼吸を荒くしながら横たわる透の姿があった。

「透!」

 私は慌てて透に駆け寄った。

「これはひどいな……」

 絶句する大吾。

 視線を落とした透の腿は、スウェットがぐっしょりと血で濡れていた。

「大吾……無事だったん、だな……」

 片目を閉じ、険しい目つきで大吾を見上げる透。

「どうしよう……このままじゃ透が……ッ」

「……とにかく落ち着け。この様子じゃ動けそうにないな……縛るものはこれで……」

 言いながら、大吾は来ていたTシャツを脱ぐと対角線上の両端をつまんで何度か回した。

「透はここで隠れてろ。志乃は俺と美咲で捜すから」

「え……? でもそれじゃあ透が……」

「大丈夫。あいつなら邪魔しない限り美咲以外に危害は加えないから」

「それってどういう意味? ……それに……やっぱりまだ生きてるんだね……」

「あいつは俺じゃ殺せない。まあしばらくは動けないだろうけど」

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