ドッペル・ゲンガー
「よう」

 不意に男が口を開いた。

 月明かりでぼんやりと見えた口元は、心なしか笑っているように見える。

 俺は黙ったまま男を観察した。

「無視かよ。相変わらず、肝が小せえな」

 くつくつと、今度は声を出して男が笑った。

 この声、どこかで……

 不思議な感じがした。男について全く心当たりがないのに、俺はこの声をよく知っている。

 一体誰だ。
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