ドッペル・ゲンガー
 ……♪……♪

 無機質なコール音が受話口から漏れる。

 良かった。電話は繋がるようだ。

 早く。

 早く出ろ。

「もしもし」

 まるで異世界に一人迷い込んだ気分になっていた俺は、電話越しに聞こえた人の声に思わず声を上げそうになる。

「もしもし! 変な奴に襲われてんだ! 今すぐ来てくれ!」

「落ち着いて下さい。今どちらですか?」

「今は……」

 ……何かがおかしい。

 警察ってのはこんなにも淡々としているのか?

 詳しい事も聞かずにいきなり場所を聞いてくるなんて……

 まさかーー
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