ドッペル・ゲンガー
「ちょっと美咲、何でにこにこしてんの? ……ていうか、あれ? 今日、何か一人足りなくない?」

 志乃が教室内を見渡す。

 そういえば、今日はまだ一回もノートを見せてってお願いされてない。

「あいつ、何やってんのよ?」

 志乃が怪訝そうな顔で、対角線上で何やら机に向かって手を動かしている大吾へと視線を送った。

「え……マジ? あいつもしかして勉強してんの?」

 まるで幽霊でも見たかのような、志乃は大袈裟に驚いてみせた。
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