ドッペル・ゲンガー
 そんな事を考えながらその様子を眺めていると、私達の視線に気付いたのか、大吾は教科書を閉じてこちらにやってきた。

「うっす。お疲れ」

 柔らかな表情で挨拶をしてきた大吾に、私達三人はぎこちなく返事を返した。

「あのさ、一応聞いとくけど、……さっき何してた?」

 冗談半分の口調で、志乃が大吾の顔を覗き込んだ。

「ん? 何って、勉強だけど?」

 さらっと言ってのける大吾に志乃は信じられないと目を大きく開いた。

「ちょっと大吾、あんた昨日何か悪いものでも食べたの?」

「どういう意味だよ。試験前に慌ててやるとまた大変だろ? だから今の内にこつこつやってんだよ」

 志乃は完全に呆気にとられてしまったのか、口を大きく開いたまま固まっていた。
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