ドッペル・ゲンガー
「大吾!」

 帰りのHRが終わり、クラスメイトがまばらに教室を出ていく中、私は出入口に差し掛かった大吾の背中に声を投げる。

「おう美咲、何だよ?」

 いつもなら、「ん?」とか、「声でけえ」とか返してくるのに、今日の大吾はやはりいつもと雰囲気が違っていた。

「あ、いや……」

 呼び止めたはいいけど、次の言葉までは用意していなかった。

 大吾は不思議そうに首を傾げる。
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