ドッペル・ゲンガー

「何だよ、ぽかーんとして。体調でも悪いのか？」

　大吾の真っすぐな瞳が私を捉える。

「いや、あの……大吾、真面目に勉強する気になったんだね」

　自分の抱えている違和感の正体がはっきりとしないまま、私はとりあえず口を開いた。

「まあな。そろそろ進路も真剣に考えとかないといけないだろ？　いざ受験ってなって、志望校選びに苦労したくないしさ」

　にこっと笑顔を浮かべる大吾。

　大吾の言う事は間違っていない。でも何か違うと思った。

「何で急にそんな事考えるようになったの？　だって昨日までは……」

　ストレート過ぎな問いかけに言葉を選び損ねたかなと思い、私の声は小さくなる。

「あ、美咲も志乃みたいに俺が何か悪いもんでも食ったと思ってるわけ？」

「い、いや、別にそういう……」

　むっとさせてしまったかと思い、私は恐る恐る大吾を見上げる。そこには苦笑いを浮かべながら照れ臭そうに後頭部を掻く大吾の姿があった。