ドッペル・ゲンガー
「まあ、急に俺が真面目にしだしたらそりゃびっくりするよな。でも、美咲にもあんまり迷惑かけるのも悪いと思ってさ。休憩中にも言ったけど、まだあんまり追いついてなくて。だから分からないところがあったら今まで通り教えてくれよな」

 大吾が小脇に抱えた通学鞄へと視線を移す。いつもはぺたんこだったのに、教科書でも持って帰るつもりなのか、今日はかなり膨らんでいた。

「用事はそれだけか? 俺はそろそろ行くけど……」

「え、あ、うん」

 別の事に意識を向けていたので私は慌てて取り繕った。

「じゃあまた明日な」

「うん。また明日」

 別れの言葉を口にして、大吾は私に背を向ける。

「……あんまり考え込むなよ」

「えっ?」

 聞き返した時には大吾は教室の外に身を乗り出していた。
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