ドッペル・ゲンガー
 その辺りは、一応盛り場としての暗黙のルールで、こちらはただ黙って愛想よく接客をしなければならない。

 居酒屋でバイトをするのも楽じゃない。

 特に私は見た目が派手なので、他のバイトの子よりもそういった災難に遭遇する事が多かった。

 「はあ……」

 無意識に溜息が漏れる。

 私だって好きでこんな格好をしているわけじゃないのに。

 本当の私は……

 つまらない事を考えながら宴会のセッティングをしていると「朝礼ー」と奥から店長の声が飛んできたので、私は最後に全体を確認してそちらに向かったーー
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