ドッペル・ゲンガー
「つ、疲れた……」

 時刻は二十二時半過ぎ。

 何とか暴走するオッサンをかわしつつ無事宴会をこなした私は、上がりの時間を迎えていた。

 パンパンに張った足をほぐしながら退勤処理を行う。

「お疲れ。今日、大変だったな」

 時間的にも店が落ち着いてきて、隣で作業をしていた店長に声をかけられる。

「ほんと大変でしたよ。今日なんか、三回」

 軽くお尻の方へ手をやると、店長は苦笑いを浮かべた。

「オッサン連中は酔うと何でもありだからな。ま、居酒屋で働くバイトの宿命、ってやつだな」

 簡単に言ってのける店長の言葉に肩を落とす。

 そんなにあっさりと言われてもな……

 思ったところで、店長に文句を言っても始まらない。

 ここでバイトをする以上、"それ"も込みで働かないといけないんだから。
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