ドッペル・ゲンガー
 しょうがないな……

 私はその様子に目を細めながら彰吾の背中を見つめた。

 私の家族構成は、お母さんと私、そして小学六年生の弟の三人だ。

 父親の顔はよく覚えていない。

 その話をするとお母さんが辛そうな顔をするのであまり詳しく聞いた事はないけど、私が五歳ぐらいの時に離婚したようだ。

 二人の間に何があったのかは分からないけど、その話をした時のお母さんの表情を見れば、それが決して良い別れ方じゃなかった事は簡単に想像できた。

 なので、私はその話について自分から切り出した事はなかった。

 気にならないと言えば嘘になる。

 だけど、そんな自分のくだらない好奇心よりも、何より私達を大切にしているお母さんに対して辛い顔をさせる方が私は嫌だった。
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