ドッペル・ゲンガー
 他にも挙げ始めたらきりがないぐらい、お母さんはまるでごっそりとなくなってしまったもう一人分の愛情の埋め合わせをするように、私達にできる限りの愛情を注いでくれた。

 そんなお母さんの背中を見ながら、私は高校に入学してある決意を固めた。

 大学には行かずに、高校を卒業したら家を出る。

 正直、うちの家計はかなりぎりぎりなはず。

 当たり前のように高校に通わせてもらっているけど、その裏でのお母さんの相当な苦労は、決して表には出さなくても私には分かる。

 来年からは彰吾も中学に進学して、これからもっとお金がかかるだろう。

 男の子だから、今よりもっと食べ盛りになれば食費だってさらにかかる。

 今ですらお母さんにかかる負担は相当なもののはずなのに、そうなればもう限界を超えてしまうんじゃないかと、私はずっと心配していた。

 だから私は大学には行かない。

 一人立ちもして、自分の事は自分ですると決めていた。

 そのためにバイトのシフトだって詰めに詰めて頑張っていた。
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