ドッペル・ゲンガー
 パタン……

 私が冷蔵庫と睨めっこをしていると、不意に背後で扉の閉まる音がした。

 「お母、さん?」

 音がした方向からして、それはお母さんの寝室だと思った。

 もしかして起しちゃったかな?

 怪訝に思いながら扉へと視線を移す。

 にしても、様子を見ただけだったんだろうか。

 小首を傾げながら何となく気になったので、扉の前へと向かう。

「お母さん? 起きてるの?」

 中からの返事はない。

 寝ぼけたまま、またすぐに寝てしまったのだろうか。

 大して気にとめるような事ではなかったけど、私はそっと扉を開いてみた。

 「入るよ?」

 薄く開いた扉の隙間から、中の様子がほんの少しだけ見えた。

 と言っても、部屋は真っ暗なので、正確には家具などのシルエットだけ。
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