ドッペル・ゲンガー
 初めはほんの小さな喜びから。

 ちょっと努力をしてわずかな成功を手にすれば、親や周りからは「できる子」だと評価をもらえた。

 それがとても嬉しくて誇らしくて。

 もっと褒めてもらいたいという気持ちが、いつしか俺を努力と結果に対して貪欲にさせていった。

 ただ、自分の中で違和感を感じ始めたのは、俺が高校に進学して最初のテストの総合結果を目にした時からーー

 学年一位。

 出だしとしては最高の結果だった。

 だけど、そこで俺はふと不安に思った。

 一位を取ったら、次はどうやって上を目指せばいい?

 喜びよりも疑問の方が俺の頭の中を駆け巡っていた。

 学校内でトップを取ったのなら、次は全国模試でトップを目指せばいい。

 答えは簡単だった。

 けれど、そこで俺は気付いてしまった。

 俺は別に勉強やスポーツでトップを取りたかったわけじゃない。

 ただ単に、努力をして結果を出す事に対して褒めてもらえる事が嬉しかっただけの話で、勉強やスポーツは褒めてもらうための手段であって、そこで結果を残す事自体が目的じゃない。

 そう思い当たった時、俺は人知れず悩んだ。
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