ドッペル・ゲンガー
 目的でないなら、今後ハードルを上げてしまえば以前のように結果が出なくなるかも知れない。

 学校内という限られた世界では何とか結果を残せたかも知れないけれど、全国模試なんて、本気で学業に取り組んでいる相手に俺の中途半端な情熱が通用するはずがなかった。

 そうなれば、俺が今後目指せるのはせいぜい学校内でのトップの座を維持し続ける事だけ。

 現状維持。

 つまりそういう事。

 それは上を目指すという事からはかけ離れていた。

 常に上へと昇る事で褒めてもらえていた俺は、このままだとそんな賛辞の言葉を失うだけでなく、逆にそれが失望に変わってしまうんじゃないかと不安になった。

 周りの期待を裏切りたくない。

 いつしか俺の努力の原動力はそんなネガティブなものに変わっていた。

 前向きさを失った努力はもはや苦痛でしかない。

 毎日のように、言いようのないプレッシャーが圧し掛かっていた。

 これが今の俺の現状だ。
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