ドッペル・ゲンガー
 俺が目を覚ましたのは、すっかり室内が暗くなった頃だった。

 時間を確認するために手に取った携帯のディスプレイには二十一時十七分と表示されていた。

 起こしてくれなかったのか?

 さっきの母の話だと、親父はニ十時には帰宅しているとの事だった。

 一緒に食べると言ってあったので、本来ならもうとっくに起こしにきていてもおかしくない。

 気を遣ってくれたのかな。

 考えても仕方ないので俺は体を起こし部屋を出た。

 出てすぐの階段の電気を点けようと、スイッチに手を伸ばす。

 パチ、と音が鳴ったのに階段の電気は点灯しなかった。

 押し損ねたのかと思いもう一度スイッチを押す。

 あれ……

 階段はまだ真っ暗なままだ。

 停電でもしているのだろうか。

 下の方へと視線を移すと、ちょうどこの位置から見えるリビングの扉に嵌め込まれた磨りガラスからも明かりは確認できなかった。
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