記憶
「一番初めの記憶って何?」
この質問はもう何度目だったか。
整髪料の臭いが鼻に障って、思わず顔をしかめそうになるのをこらえる。
胡散臭い笑顔のインタビュアーに、私は答える。
「試験管の中ではないことは確かです。」
ふふふっと、笑ってそっと指を口に添える。
なるべく優雅に、ゆったりと。
そして続ける。
「そう、光がいっぱいだったんです。暖かな日差しの中で、昼寝をしているような。とても心地よくって微睡んでいるうちに、だんだんと周りの景色がはっきりしてきたの。見えたのは泣き顔のドクターの顔。『おめでとう、おめでとう』って、泣きながら呟いてました。」
まるで熱に浮かされた様に、うっとりと、そして、涙を堪えるように。
私は話す。
予め用意されていた台詞を。